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 下のグラフは18歳人口とその年の大学志願者数の推移をみたものです。1990年代の前半には200万人を超えた18歳人口は、近年120万人前後で推移してきました。2020年度以降は再び減少期に入ります。ピークであった1992年の18歳人口と比較すると、2020年度は6割未満、2024年度には半数にまで落ち込みます。

 一方の大学志願者数をみると、こちらも近年は70万人弱で推移しています。ピーク時の1992年からの減少率は25%ほどにとどまっており、「18歳人口の減少ほど大学志願者は減っていない」といえるでしょう。これは、かつてと比べると高校卒業後に大学進学を志望する人の割合が高まったためです。近年の大学志願率(大学進学者数÷高校卒業者数)は50%前後で推移しているため、今後は18歳人口の減少に伴い大学志願者数も緩やかに減少していくでしょう。

 

●18歳人口と大学志願者数の推移

 

 

 2010年代初頭に顕著だったのは、景気の低迷を背景にした国公立大学志向、地元志向などでした。2008年秋に起こったリーマンショックをきっかけに、国公立大学の志願者数は増加しました。国公立大学は私立大学に比べて学費が安いことなどから、不況時には人気となるのです。

 2015年度は現行過程の入試への移行に伴い、センター試験では理科の科目負担が増えました。このため、国公立大学を敬遠する動きが見られ、国公立大学の志願者はやや減少しました。以降、国公立大学の志願者数はそのまま横ばいで推移してきましたが、2020年度入試では志願者の減少率が高くなりました。18歳人口の減少にともない大学志願者の頭数が減少したことが主な要因ですが、共通テスト導入をはじめとする入試改革を翌年に控え、一般選抜を受験せず、AO・推薦などの特別入試で早期に進学先を決めた受験生が例年以上に多い様子がうかがえました。これまでにも国立大学の科目負担が増え、志願者数が大きく減少したことがありましたが、景気など社会環境はもちろん、入試の変化が志願動向に影響を与えることがあるのです。

 私立大学の延べ志願者数は2019年度入試までの13年間増加が続きました。これは、私立大学を志望している受験生が増加したというよりは、一人あたりの受験校数が増加したことが要因です。近年は、こうした志願者の増加に伴い難関私立大を中心に難化傾向がみられてきましたが、2020年度入試では、前年入試で難化した大学を避ける動きがみられ、私立大の延べ志願者数は14年ぶりに減少しました。国公立大同様に、人口減や大学志願者数減の影響も一因と考えます。

 学部系統の人気も変化しています。2008年秋のリーマンショック後、大学生の就職が厳しい時代には、理系や資格に直結する学部が人気となり、いわゆる「文低理高」の基調が続きました。2015年頃からは企業の採用が改善したことなどから「医」「薬」といった資格に関連が深い学部系統では志願者が減少し、「社会科学」系などの文系の系統では志願者が増加し学部系統の人気は「文高理低」となっていました。2020年度入試では、「医」「薬」などの医療系は引き続き低調な人気となりました。一方、「理工」系は志願者が増加し、堅調な人気を示しました。なかでも、「情報」系分野が人気を集めています。近年、loTやAIなどの情報技術の発展に対する期待感の高まりがその要因でしょう。このように学部系統の人気は時代によって変化するものなのです。

Kei-Netより